紙の本と電子の本で大きく異なる、複製コストについて。
「紙の本を出版する」には、部数やページ数などに応じて印刷・製本コストが必要になります。ユネスコの定義なら「本」は本文で最低48ページが必要です。また、publish=公にするにはある程度の部数が必要です。
今朝の朝日新聞の投書「自費出版したエッセー集を国会図書館に納本しようと出かけたが、受け付けてもらえなかった。…広く読者の目に触れる出版物が対象で、…少なくとも100部程度は必要」
— Haruhiko Okumura (@h_okumura) August 31, 2013
試しに小部数印刷のオンライン見積りをしてみました。48ページの中綴じ、100部、本文A5モノクロ、別紙表紙カラーで印刷・製本すると、送料・税別で約2万6000円かかるようです。1部あたりで260円。
これはもちろん、紙質やページ数によって大きく変わります。160ページの並製で、100部、本文A5モノクロ、別紙表紙カラーだと、送料・税別で約6万3000円。1部あたり630円です。
そしてこの印刷・製本コストは、広く頒布しようと思うほど重くのしかかってきます。48ページの中綴じで1000部なら20万円強、160ページの並製で1000部なら55万円強です。
これが電子の本の場合、複製コストはゼロです。ファイルが100回コピーされようと、1000回コピーされようと、1万回コピーされようと、出版する側に費用は発生しません。
もちろん販売プラットフォーム側には、データを保管するサーバーや回線の運用コストがかかっているわけですが、通常それは「売れたとき」に対価から手数料として差し引かれる費用で購われるため、出版する側に別途費用が発生することはありません。
プラットフォームによっては、販売する品数が多い場合は有償になる場合もありますが、個人で発行するレベルであれば、まず費用はかからないと考えていいでしょう。
紙の本に比べ、電子の本は自己出版(セルフパブリッシング)しやすいのは、これが大きな要因の1つです。「趣味の延長だから」と対価をもらわず無料で配布or配信するとしても、紙の本の場合は確実に配布する数だけ複製コストがかかってしまうのです。