NPO法人日本独立作家同盟の電子雑誌『月刊群雛』に、作家と編集両方の立場から関わることになった波野發作(なみの・はっさく)氏が、『月刊群雛』への参加方法について優しくかみ砕いたガイドを寄稿してくれました。短期集中連載第4回は、「群雛用の作品を用意しよう」です。
第4章 群雛用の作品を用意しよう(1)
必ず「レギュレーション」を確認しよう。毎月ね
『月刊群雛』を読んで、日本独立作家同盟がどんなものかわかったところで、そろそろ参加を考えてみようじゃないか。つまり、作家として関わろうということだ。読んでわかったと思うけれど、読んでるだけじゃつまらないだろ。自分の作品も『月刊群雛』に載せてみたいはずだ。
『月刊群雛』にはいろいろと細かいレギュレーションがある。まあ規則というかルールだ。なんでそんなに細かいことを言うかというと、円滑な進行と省力化のためだ。同盟はいつでも人手不足だ。専任の社員なんかいないから、編集はボランティアがやっている。厳密には印税の一部が頂けるが、コーヒー一杯飲めるかどうかというところだ。そんな編集部なので、できるだけ右から左で済むようにするのが、作家にできる唯一のことだ。レギュレーションはたまに変更になってしまうが、常にチェックしてスムーズに制作が進められるように、参加者全員に考えて欲しいと思うのだ。これはぼくが編集にも関わっているからではなく、いち参加作家としての気持ちだ。作家としてのプライドにかけて、可能な限り完全なものを入稿しようではないか。
全文を逐一説明してもいいが、それでは書く方も読む方も二度手間なので、割愛する。とくに重要なもののみ紹介して、ポイントを押さえてもらおうと思う。常識的なものは当然割愛だ。公序良俗に反するもの、犯罪を助長するもの、グロ過ぎ、エロ過ぎはまあ避けておこう。差別的なのも議論を呼ぶので避けた方がいいだろう。もちろん、文芸はアートであるので、あらゆる表現は自由であるべきであるが、本件に関しては乗り合いバスであるので、相互にほどほどを考えておこう。話がそれた。その手の議論はGoogle+のコミュニティで大いにやっていただきたい。ここでは省略させていただく。
さて、そのレギュレーションであるが、主に2種類に分けられる。
作家本人に関することと、作品に関することだ。
作家本人に関することはまず同盟の一般会員であること。これは前章でクリアしている。次に出版経験があること。これも前章でクリアした。冗長だと思ったかもしれないが、これも皆このための布石だったのだ。どうよ。そしてメールなどで連絡がつくこと。連絡がなかなか付かない人は困るというのは、わかると思う。人手が足りないのに、連絡に手間ひまかけられないっていうこと。まあ、なるべく翌日には返信をするようにしておきたいところ。完成間近であればなおさらだ。
そしてもう一つ。締め切りが守れること。編集に使える時間は限られている。原稿がなければ何もできないので、作者としてはどうにかして締め切りに間に合わせたいところ。これを確実にする方法は唯一つ。名乗りを上げる前に完成させておくことだ。これであれば、間違いなく間にあう。ちなみに締め切りをブッチすると、その号は掲載されない。それを3回やっちゃうとスリーアウトで以降の掲載はお断りってことになるかもしれないから気をつけよう。まあ、締め切りに関しては、今後プロになったりしたときにはもっとシビアに襲いかかってくるのだから、今のうちに厳守癖をつけておく方がいいだろう。
一方、作品の方はオリジナルの自作の新作に限る。新作というのは、どこにも公開していない、という意味だ。代行はダメ。ややこしいからね。文章モノ以外に、漫画や写真もOK。ジャンルは幅広い。ただし、ノンフィクションの場合は事実関係が確認できる資料を提供するように求めている。先に用意しておこう。あとは文字数などの分量を守ればだいたいOKだ。
その他印税の分配など細かい取り決めがある。編集部はあなたがすべて読んだ前提で話を進めてくるので、事前に目を通しておこう。また、レギュレーションは今も進化を続けている。毎月どこかが改善され続けているので、コミュニティの告知は見逃さないようにしよう。定期的に読み返すのもいいだろう。意外にあとで「え? そうだったの?」という項目があったりする。
標準か、掌編か。それが問題だ。参加する枠を決めよう
レギュレーションの話はもう少しあるが、ここでは掲載枠の話をしよう。
『月刊群雛』は最初から掲載枠というものが決まっている。ジャンルには関係なく、「連載」「読切」「掌編」の3つだ。「掌編」は最近導入された枠。以前は「既刊」というすでに発表されたものを載せる枠もあったが、役目を終えたので今はもうない。
連載は3作品まで。初回入稿時に全部書き上がっている必要がある。以前は、2回目以降はプロットまででよかったが、レギュレーション変更で一括入稿に変わったので注意だ。最大6回まで。枠が空いてからじゃないと募集ははじまらない。それとまずは読切での掲載経験がないと出せない。1回の文字数は読切と同じなので、あとで説明するよ。
読切枠は正しくは読切標準という。これも3枠だけだ。3枠のうちの1枠は「新人さんいらっしゃい枠」だ(ぼくが今名付けた)。3日間待って誰も新人が来なかったらロートルに開放される。つねに新しい血を受け入れようという同盟の心意気が制度化されたものだ。もちろん3枠全員が新人だって構わない。
分量については9ページ以上20ページ以下。BCCKSの10インチ標準レイアウトの45文字×20行を1ページとしたものだ。目安としては2000字〜1万字だが、60%が文字で埋まっている場合を想定している。ラノベみたいにセリフでスッカスカの場合はガンガンページ食っていくので注意だ。ぼくの作風はわりとツメツメで書くので、1万字と自主規制して書いた。文字数ギリギリまで攻めたい場合は、BCCKSで実際に流し込んでみて調整してから入稿するといいだろう。あるいはエディタかワープロで行数を測った方が早いかもね。そこで45文字に設定して、180行以上〜400行以下ってことでもいいだろう。これは連載枠の1回あたり分量も同じだ。ただし、タイトルや小見出しは本文より幅が大きいので注意が必要だ。
新しく加わった掌編枠は正しくは読切掌編という。掌編とはいわゆるショートショートだ。枠数は4枠ある。1枠が新人用なのは同じ。4ページ以上8ページ以下で、1600字〜4000字が目安だ。
他に表紙枠とかもあるが、この連載は文字書きさん向けに書いているので割愛する。
連載と読切標準はコラボ参加が許されている。1作品4人まで組める。たとえば、原作Aさん、執筆Bさん、挿絵Cさんでトリオを組んだりもできる。ただし印税は1人分を山分けだ(端数切り捨て)。掌編はコラボできない。
もう1つ気をつけるのは、「連続掲載はできない」ということだ。連載も開始前と終了後は1回休みを入れねばならない。読切なら必ず1回おきにということになる。これを忘れる人が結構いるので要注意だ。まあ、掲載できない月は他の作家の作品を研究したり、じっくり読み物や調べ物をしたり、連載の計画を立てたり、次回作を練ったりしたらいいんじゃないかな。
枠に関しては過去にもよく変化することがあった。わりと変更の多い部分だから、投稿の前には常に最新の状態を確認しておこう。
〈続く〉
【目次】
- はじめに
- 第1章 インディーズやろうぜ
- 第2章 群雛を読もう
- 第3章 日本独立作家同盟に参加しよう
- 第4章 群雛用の作品を用意しよう(1) ← いまここ
- 第4章 群雛用の作品を用意しよう(2)
- 第5章 群雛に参加しよう(1)
- 第5章 群雛に参加しよう(2)
- 第6章 群雛を作ろう
- 第7章 群雛を売ろう
- 第8章 群雛を続けよう
新レーベル『群雛文庫』本日創刊。ぼくも群雛の先輩方に混ぜていただけました。ドタバタ系SFシリーズ『オルガニゼイション』第1巻です。200円+税のお手頃価格です。ヒロイン・ジェシカをソメイヨシノさんにヴィジュアル化していただきました。
https://t.co/CzMt2kgu0s
— 波野發作@毎日イチ読13番め受付中 (@fuliefool) 2015, 11月 4