『月刊群雛』2015年12月号には、和良拓馬さんのエッセイ『戦術ナドロ』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルとインタビューをご覧ください。
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作品概要
ワールドカップで大きな傷を負い、暗いムードが漂っていた2011年の日本ラグビー界。その危機を救ったのは、南の小さな島からやって来た一人の大男だった?
身長195センチ、体重129キロ。パンツのサイズは6XO。日本で一番好きな食べ物はラーメン。当時23歳だったフィジー人は、驚異的な身体能力を思う存分活かし切り、衝撃的なトライを幾つも奪っていった。彼を如何に活躍させるべきか? メンバーはひたすら、トライシーンのために身を粉にし続けた。そして、傷ついたラグビーファンたちはそんなチームへと視線を向けていった。
あのラグビーに惹かれた理由は、一体何だったのだろうか? 日本ラグビー史上「最も愛された助っ人外国人選手」の鮮烈なデビュー・イヤーを振り返る。
―― さよなら、愛しき巨神兵!
戦術ナドロ
その男がボールを抱えて走り出した瞬間、スタジアムは大きな笑い声に包まれた。あの笑いの根源にあったものは、一体何だったのだろうか。コメディアンが一人芝居でありえないストーリーを演じている「可笑しさ」と、大道芸人が大技を成功させる「驚き」の二つが、ちょうど調和したかのような笑い声だったと思う。
「巨神兵ナドロ、早くもハットトリック達成!」
なぜ「巨神兵」という文言が思い浮かんだのかはよく覚えていない。でも、この文言をツイッターにアップした時、僕は興奮していた。今、間違いなく凄いラグビー選手を見ている。
その選手を紹介する前に、お話の舞台になっている2011年のラグビー界について説明したいと思う。
この年の一大イベントと言えば、9月から10月にかけて開催されたワールドカップ・ニュージーランド大会である。世界で3番目の規模で開催されるこのスポーツイベントに日本代表も出場した。目標は1991年の第2回大会以来のワールドカップ勝利であり、あわよくばベスト8進出だった。
しかし、結果は散々なものだった。グループリーグ戦4試合で1分3敗。前評判は高かっただけに、大会が進むに連れてチームが瓦解していく様は多くのラグビーファンを失望させた。
大会後にラグビー・トップリーグが開幕したものの、明るい再スタートとは言い難かった。「これからどうなってしまうのだろう?」。ラグビーファンの不安は増えるばかりだった。
12月のある日、僕は2時間以上かけてわざわざ茨城県水戸市にあるケーズデンキスタジアムに足を運んだ。ラグビー・トップリーグの第7節、NECグリーンロケッツ対Honda HEAT戦。シーズンは折り返しを迎え、各チームは「優勝争い」や「降格戦線」を気にしだす時期である。
僕がこの試合に注目した理由。それは「とあるラグビー選手を生で見たい」というものだった。噂を聞いていた僕は、事前に東芝との試合映像を確認していた。その男がボールを抱えて走り出すと、タックルしようとした東芝のプレーヤーは次々と吹き飛ばされていった。
名前はネマニ・ナドロ。NECグリーンロケッツに所属するフィジー生まれの外国人選手だ。身長195センチ、体重129キロで当時23歳。ポジションはウイングといって、ピッチの大外を素早く駆け巡り、トライを奪うのが役割である。
Honda戦、ナドロは爆発した。前半24分でハットトリックを達成すると、後半もボールを受け取れば簡単にトライに繋がるという状況だった。合計6トライ。トップリーグの1試合最多トライ記録はあっさり更新された(そして2015年10月現在、未だに破られていない)。
しかし、ナドロがトライを奪えたのは決して自分自身の力だけではないというのも、実際に試合を観て解ったのだ。
※サンプルはここまでです。
【速報】巨神兵ナドロ、早くもハットトリック達成 #rugbyjp
— ワラタスさんにも喝采を (@Waratas) 2011, 12月 18
和良拓馬さんインタビュー
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
こんにちは。和良拓馬(わら・たくま)です。『月刊群雛』は6回目の出場となります。
フィジー、トンガ、サモアというメラネシア及びポリネシア圏の国々はラグビーの熱狂地帯なのですが、世間一般では「そんな国どこにあるねん!」的な認知度だと思われます。赤道以南の小さな島々です。どの国も人口は100万人未満です。
そんな3カ国のラグビースタイルを簡単に説明しますと、フィジーが「奔放なランニング」、トンガが「奔放な体当たり」、サモアが「奔放なゲームメイク」です。基本的にどの国も雑なプレーなのですが、雑じゃない時のクオリティはハンパないものがあります。トップリーグでも3カ国出身の選手は多数おりますので、ぜひともスタジアムでその奔放さを確認して頂ければ幸いです。
……えーっ、話がそれてすいません。当方もお陰様で、セルフパブリッシング1周年を迎えました。引き続き「インディー・スポーツライター」(兼インディー・サラリーマン)を(勝手に)自称し、全国各地の多種多様なスポーツを追いかけていこうと考えております。取材記録はブログとツイッター、書評はブクログにてお楽しみ下さいな。
◆ブログ:『ラグビー選手になりたかった』
http://will-be-rugby.blogspot.jp/
◆Twitter:
https://twitter.com/Waratas/
◆ブクログ:『こんなの読んでしまいました』
http://booklog.jp/users/waratas/
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
日本代表躍進! 空前のラグビーブーム到来か! じゃあ、そのムーブメントに乗るしかないじゃない!!
……という経緯でラグビーのお話を考えていたのですが、本誌上に「エディ・ジョーンズのマネジメント!」やら「五郎丸歩写真集!」とか載せてもインディーらしからぬ気がしたので、ネマニ・ナドロ特集とさせて頂きました。
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
当時ナドロを見て驚いた人。あと、今ラグビーに興味を持って下さった方々の背中を押す作品にしたいと考えながら執筆を進めて参りました。ラグビーを題材にした書物の質・量・幅をもっと充実させていくというのが、いちライターとしてのテーマでもあるので。
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
1週間くらいです。ただ、ラストは悩みに悩みました。
―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか
「過去の作品を再構築する」という点においては、セルフパブリッシングという場を有効に使えているなと感じています。その一方で、「新しい作品を生み出す」や「鮮度の高い情報を発信する」という点ではまだまだ出来ていないことが多いですね。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
根木珠(ねぎ・たま)さんのショートショートを無料かつ高頻度で配信するスタイルは、こういう悩みを抱えている自分も今後取り入れていきたいなと思っています。もちろん、どの作品もカラーが出ていて面白いです。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
本作とは別に『ラグビー選手になりたかった』というタイトルのラグビー本を作成しております。ただ、予想以上に苦戦しておりまして、進捗が……。あと、競馬の掌編を急遽無料配信することになりました。こちらは11月下旬になると思われます。
来年の目標は「長く深く追える」取材対象を見つけて、より大きな作品をつくることです。プライベートでは半年後の3月に横浜マラソンを走るので、練習回数を増やさないといけませんね……。
―― 2015年に読んだ書籍ベスト3を教えてください
ベスト3というよりも、同率1位の3冊というテイストで選出致しました。
・『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』 カレン・フェラン
http://www.amazon.co.jp/dp/B00MTL34AG/
単なる経営者&コンサルタント批判本かと思いきや、実例と実践(!)をベースにマネジメントで陥りやすい罠を丁寧に解き明かした良書。日々の仕事を俯瞰的に捉えるのは良いけれど、「メガネのチョイス」を誤るとマズいということでしょうね。
・『CUT 2015年8月号』
http://www.amazon.co.jp/dp/B00ZD9ENMO/
今年アホみたいにハマったコンテンツが『ラブライブ!』でして、アイドルとしてはPerfume以来の個人的大ヒットとなっております。本書は『ラブライブ!』の今と歴史を知る一冊としてむさぼるように読みました。あと、ナンジョルノかわいい。
・『賭ける魂』 植島啓司(うえしま・けいじ)
http://www.amazon.co.jp/dp/4062879425/
作者が唱える運や縁の考え方は非常に独特であり、いつも読み終えたあと胸の重しがすっと取れてしまいます。不確実なギャンブルという存在は、生き方を投影する役割をも担っているのでしょうか。タイトルも秀逸。
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
僕は『風の谷のナウシカ』を観たことがありません。
和良拓馬さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2015年12月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。
《 感想 》
群雛2015年12月号
和良拓馬『戦術ナドロ』
いま話題のラグビーで、あえて話題の部分を外して語っているのは、さすがという印象。
過渡期における一瞬の奇跡のような楽しさ、そして安定期を迎えてしまったことに対するちょっとした寂しさを感じた。
良かった。
#群雛
— 潮見佳助 (@Keisuke_Shimi) 2015, 12月 23
インディーズ作家よ、集え!
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画など自らの作品をセルフパブリッシング(自己出版)している方々の活動を応援する団体です。コミュニティ運営、雑誌『月刊群雛』の発行、セミナーの運営などを行っています。
http://t.co/fGhoghLQ0R
— NPO法人日本独立作家同盟 (@aia_jp) 2015, 8月 20