小説『夢のつづき』が『月刊群雛』2015年12月号に掲載! ―― 作品概要・サンプルと泉鳴巳さんインタビュー #群雛

作品情報&著者情報
『月刊群雛』2015年12月号

『月刊群雛』2015年12月号には、泉鳴巳さんの小説『夢のつづき』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルとインタビューをご覧ください。

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作品概要

 苦心の結果、私は幼い頃からの夢だった童話作家に、ようやくなることができそうだった。
しかし、夢を掴みかけた途端、ペンを持つ右手が動かなくなってしまった。あれだけ頭の中に溢れていたアイデアが、物語が、旱魃の湖のように干上がってしまったのである。
 そんな私を見かねて、作家仲間がとある人物を紹介してくれた。作家としての彼があるのは、その人のおかげとまで言っていた。
 半信半疑で訪ねた私に、その老人は言ったのだった。「それではひとつ、ある短い物語をお聞かせいたしましょう」

―― あの日見た夢の続きはどこにあるのだろう。

夢のつづき

「〝人が想像できることは、必ず人が実現できる〟――この言葉をご存知ですかね?」
 私の目の前には、安楽椅子に腰掛けた老人がいた。顔中が白い髪と髭に覆われ、その表情は窺い知れない。

 先日、私の書いた短編童話が小さな賞を受賞した。小さいとはいえそれなりに歴史のある賞で、受賞作品に数作品を加え、短編集として本を出すことになった。
 ペンを執ってから実に、二十年。私はようやく、幼い頃からの夢だった童話作家になることができる。
 だというのに。長年の夢が手を伸ばせば届くところにやって来た途端、ペンを持つ右手が動かなくなってしまった。
 あれだけ頭の中に溢れていたアイデアが、物語が、旱魃かんばつの湖のように干上がってしまったのだ。
 一日に何時間と机に向かうが、一文字も書けないのだ。ひどく焦った。髪は抜け、目は血走り、食事も喉を通らなかった。
 そんな私を見かねてか、作家仲間がとある人物を紹介してくれた。紹介者の彼は、作家としての今があるのはその人のおかげ、とまで言っていた。
 気分転換も兼ねて行ってきたらどうかと背中を押され、冬の晩、半信半疑でその人物の家を尋ねた。そこで出迎えてくれたのが目の前にいる老人だった。
「物語が書けなくなった、そう伺いました」
 老人は囁くように言った。
「ええ」
 隠しても仕方が無い。私は素直に頷く。
 すると老人も小さく顎を引いた。
 暫しの沈黙。老人も、私も、口を閉ざしている。
 先に口を開いたのは老人の方だった。
「それではひとつ、ある短い物語をお聞かせいたしましょう」
 先程までとは打って変わって、地の底から響くような凄みのある声だった。
 小柄な老人のどこからこんな声が出るのか。思わず怯んだ私は何も応えることができなかった。
 そして、老人は静かに語り始めた。
「今からお話しするのは、とある少年と少女の物語……」

※サンプルはここまでです。

泉鳴巳さんインタビュー

泉鳴巳

―― まず簡単に自己紹介をお願いします

 名前:泉鳴巳 / (ふりがな)いずみ・なるみ

◆ホームページ:『CURIOUSER AND CURIOUSER!』
http://izmnrm.wpblog.jp/
◆Twitter:
https://twitter.com/Narumiluminous/

 この度本誌に初めて参加させて頂きました泉鳴巳と申します。宜しくお願い致します。
 普段は投稿サイトで活動しています。二千~八千文字程度の掌短編を中心に書いております。
 星の砂文庫様で審査員特別賞を頂いた作品『機械仕掛けのセンティメント』、メディバン様経由のセルフパブリッシング作品『Spica-泉鳴巳短編集-』が電子書籍として発売中です。機会がございましたら立ち読みをご覧頂ければ大変嬉しく思います。

―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください

 直接的に、というわけではないですが、思春期の頃から読んでいた村上春樹(むらかみ・はるき)作品からは良くも悪くも影響を受けてしまっている気がします。また漫画家の熊倉裕一(くまくら・ゆういち)先生の世界観にも影響を受けている、というか憧れがございます。

―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか

 書き上げるまでは二時間程度です。細かい修正等を含めると合計で半日くらいだと思います。

―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

 TwitterなどのSNSや、自分のホームページが中心です。また自身の筆力向上と周知のため、投稿サイトで活動しています。

―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか

 掌編や短編は一気に書けるのですが、中長編となると途端に筆が止まってしまうので、今後は長い作品にも挑戦していきたいと思っております。

―― 2015年に読んだ書籍ベスト3を教えてください

・『少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語』 一肇(にのまえ・はじめ)
http://www.amazon.co.jp/dp/4041106850/
 映画作りのために奔走する主人公や学生たち、そしてヒロインの姿が爽やかで瑞々しく、それでいて〝熱〟を感じられる作品。読後感も良かったです。創作に携わる方には特にお薦めしたい作品です。

・『掟上今日子の備忘録』 西尾維新(にしお・いしん)
http://www.amazon.co.jp/dp/4062192020/

 西尾維新の探偵もの。良くも悪くもクセの強かった作風がずいぶんまろやかになったような印象を受けましたので西尾作品の入り口にお薦めです。現在テレビドラマも放送中ですね。

・『午前零時のサンドリヨン』 相沢沙呼(あいざわ・さこ)
http://www.amazon.co.jp/dp/4488423116/
 いわゆる〝ジャケ買い〟でしたが予想以上に面白かったです。謎は解明するものだというミステリ好きの主人公と、不思議は不思議のまま楽しんだ方がいいというマジシャンのヒロインの対比が興味深かったです。

―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 今後もネットの様々な場所で活動していきたいと思いますので、どこかでお見かけになった際はぜひお声を掛けて頂ければ嬉しいです。ありがとうございました。

泉鳴巳さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2015年12月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。

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