『月刊群雛』2015年12月号には、波野發作さんの小説『オルガニゼイション』最終回が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルとインタビューをご覧ください。
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作品概要
知らず知らずのうちに繰り返され積み重なる無数の次元。多重量子は臨界間近で宇宙滅亡も遠くない危険領域だ。ティムティキの落とした〈リセットボタン〉を誰が拾ったのか。紅葉商店のメンバーは試行錯誤の末、ようやくある人物にターゲットを絞り込んだ。問題はどうやってタイムリープを止めるかだ。限られたリソースと情報を組み合わせ、秋葉先生が導き出した解答とは? スラップスティック・SFコメディシリーズもいよいよ最終回だ!
―― 何度も繰り返せば、そのうち上手くいく
彼女の祈りとハートブレイク・ワールドエンド
神様は私たちに、成功してほしいなんて思っていません。ただ、挑戦することを望んでいるだけよ。
木下節子は追い詰められていた。もう打つ手が思いつかない。
男が去った後、今日も節子は席から立てずにいた。
「ユウジ、なんで……」
なんで、また……。
どういうルートを通っても、彼の心を掴むことができなかった。
この三ヶ月を何度繰り返しただろうか。
あらゆる組み合わせを試してみたが、どうやってもバッドエンドにしかならないのだ。
節子は手帳を開いてみる。何か見落としはなかっただろうか。それとも何か記憶間違いがあっただろうか。
手帳を埋めつくす条件分岐の羅列。何度見返しても、間違いは見当たらなかった。今回で、すべての順列組み合わせを試したはずだ。
今回もダメだろうとはうすうす勘づいていた。前回と違うのは、今日の髪型だけだ。髪型一つで、運命が変わるとは思っていなかった。
このルートでは試していなかったツインテールに挑戦したのに、全く彼の態度に変化はなかった。ツインテールの時は、彼はこのファミレスに来るなり顔色を変えて、居心地が悪そうになってしまう。そこからどんな超展開があるのかと期待したが、結局はいつも通りのセリフを吐いて、彼は席を立ってしまったのだった。
反省会をしよう。節子は、気分を切り替えて、ドリンクバーにカフェオレを取りにいった。
コーヒー豆を挽く音が空しく響き、コポコポと音を立てて、カフェオレの液体がコーヒーカップに注がれていく。
どうしたら、いいんだろう。
来週はクリスマスだ。今年もまた、シングルベルなのだろうか。寂しい。
正月には30歳になる。年末に帰省する度に言われる「そろそろいい人見つかったかい?」という母と、「母さん、そういうのは縁だから本人に任せておきないさいよ」という父の決まりきったやり取り。また、聞くことになるのか。やはり、〈リセット〉した方がいいのだろうか。もう諦めようか。
そこまでこだわるほどの相手なのかと聞かれると、もうどうでもいいような気もしていた。
ユウジは、ある意味では理想的な相手だった。身長、年収、ルックスのすべてが人並みで、何も不足がない。いいところもないが、欠点がないことの方が大事だ。何より、公務員なのが良い。彼なら、どこに連れて行っても、誰からも無難な祝福を受けることができるだろう。
※サンプルはここまでです。
波野發作さんインタビュー
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
波野發作(なみの・はっさく)です。連載6回やりきりました。どうでしたか。楽しんでいただけましたでしょうか。さすがに名前を覚えてもらえたかと思いますが、今回がお初という方もいると思うので改めまして、なみのです。名前は旧字体の發に作ではっさくです。以後お見知りおきを。群雛ではSF小説を書いています。他ジャンルでの活動もしていますので、ぜひ公式サイトをのぞいてみてください。
◆ 公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
最終回なのでシリーズ全体の話をしましょう。そもそもは、ぼくの小説『ストラタジェム;ニードレスリーフ』の登場人物が書いたSFということで、『月刊群雛』2015年02月号で『ヴェニスンの商店』を書きました。逆メタフィクションをやってみようと思ったわけです。ところが芋づる式にいろいろ発想が膨らんでしまって、ご覧のように八作にまで増えたわけです。ちなみに『ストラタジェム~』の方は今も棚上げになっちゃっています(笑)。
―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください
タイムリープという点では谷川流(たにがわ・ながる)『涼宮ハルヒの暴走』所収の『エンドレスエイト』や、筒井康隆(つつい・やすたか)『時をかける少女』、あるいは桜坂洋(さくらざか・ひろし)『All You Need Is Kill』などが思い浮かびますが、本作に関してはジョー・ホールドマン『ヘミングウェイごっこ』の影響が大です。日本では有名ではないですが、ヒューゴー賞受賞作品なので機会があれば読んでみてください。
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
人生をやり直したい人。締め切り間近で、あーやっべー1カ月前に戻りてーとか思ってる人。恋人に暴言を吐いてしまって後悔している人。あと日本全国1200万人のオルガニゼイションファンのみなさん。こんばんは!
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
ズバリ1日です。前号掲載の第5話で思い切り時間を食ってしまったんで、もうあまり後がなかったんです。人間追い詰められればそこそこのことはできます。
―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか
Twitter & Facebookを中心にウダウダしております。あとはBCCKSで紙本を作って、「回し読み」という企画をやっています。未公開作品のモニターをやってもらうこともあるので、興味のある方はなんらかの方法でメッセージください。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
先日、SF作品の表紙画などで高名な生頼範義(おおらい・のりよし)画伯が亡くなりまして、少なからずショックを受けているわけですが、その追悼の意味も含めてダン・シモンズ『ハイペリオン』を買いました。読み終えたら今度はもう手放さないで本ごと額に飾ろうと思っています。
―― 2015年に読んだ書籍ベスト3を教えてください
ベストを3つ挙げますが、順位はありません。
・『アンダーグラウンド・マーケット』 藤井太洋(ふじい・たいよう)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00W1BX3N2/
スピード感に圧倒されて、読み終わるまで一度も顔を上げられず。コーヒーのおかわりを買いにいこうと思っていながら、ページをめくる手がまったく止まらず、結局最後まで読み終えてから買いにいったんですよね。
・『サプール ザ ジェントルメン オブ バコンゴ』 ダニエーレ・タマーニ
http://www.amazon.co.jp/dp/4861524997/
「年収3万円の半分をファッションにつぎ込む」というアフリカ・コンゴのイカす集団「サプール」の本。これは全編ただひたすらカッコイイだけの本です。粋ってこういうこと。
青幻舎
売り上げランキング: 3165
・『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 押見修造(おしみ・しゅうぞう)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00GWBBDG6/
今さら感はあるけど読んだのは今年。コミックも含めていいの? という声もあるかと思うけど本には違いないでしょ。とにかく今年のガチなベスト3は何かって聞かれてこれを入れない訳にはいかないのです。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
群雛的な話をすると、「群雛文庫」で展開が始まった『オルガニゼイション』を進行していきます。今回の第8話より先のエピソードも『群雛文庫』の延長線上でご覧いただけるかなと。もう少しお付き合いいただければと思います。だいたい全12話で第1シリーズに区切りをつけるつもりです。その先は第2シリーズや分岐した別のストーリー「ブランチ」も用意していますので、お楽しみに。
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
ジェシカたちの戦いは、まだはじまったばかりだ!!
波野發作先生の次回作にご期待ください。
波野發作さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2015年12月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。
感想
群雛2015年12月号
波野發作『オルガニゼイション』
各回との繋がりがあまり無い状態で最終回。
ストーリーは、単純なループもので概ね良かった。
しかしオムニバス形式の短編連載は、枠が開いているならセーフかもしれないが、何となくズルく感じた。
#群雛
— 潮見佳助 (@Keisuke_Shimi) 2015, 12月 23
インディーズ作家よ、集え!
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画など自らの作品をセルフパブリッシング(自己出版)している方々の活動を応援する団体です。コミュニティ運営、雑誌『月刊群雛』の発行、セミナーの運営などを行っています。
http://t.co/fGhoghLQ0R
— NPO法人日本独立作家同盟 (@aia_jp) 2015, 8月 20