『月刊群雛』2016年08月号には、よたかさんのエッセー『片足だけのサッカー』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。
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作品概要
クラッチ(アルミ製の杖)で体を支えて、片足だけで行うアンプティーサッカーを知ってますか? 最近、注目されはじめている『障害者スポーツ』のひとつなんですが、まだまだ選手も少なく、環境が充実しているとは言えません。それでもワールドカップには代表を送り、毎年大会が開催されています。
その大会を観戦し、体験会に参加し、少しだけですが選手の方にお話を伺って、私の素直な感想を付け加えた観戦記です。
作中にキツめの言葉もいくつか書いておりますが、誰かに対する非難というよりも、私自身が迷いながら自分に言っているのだとご理解ください。
私は個人的に『障害者スポーツ』というカテゴリはなくなった方がいいと思ってます。障害者を閉め出すということではなく、何らかの工夫をして同じステージで競う事がこれからのスポーツの理想型だと考えております。
よろしければ是非ご一読ください。
―― 超えるべきは心の壁ではないでしょうか
片足だけのサッカー アンプティーサッカー観戦記
5月の連休が明けた日曜日。足を失った人たちがプレイするアンプティーサッカー大会『第三回レオピン杯』の決勝戦が、大阪市鶴見緑地球技場で行われました。
私は障害者スポーツという括りがあまり好きではなかったので、なるべく観ないようにしていました。しかし、とある理由からアンプティーサッカーだけはどうしても気になって、名古屋から大阪行きの高速バスに乗りました。
昼前に会場へ到着し、受付で〝アンプティーサッカー体験会〟の申込みを済ませてスタンドへ上がると、ピッチでは決勝トーナメントの一回戦が行われています。
大会本部のテント近くに座り、それとなく詳しそうな方を捕まえて話を聞きます。
「あれは日本代表の……」「普段は義足なんだけど……」「ワールドカップが中止になって……」など、話は延々と続きます。きっと思うところがあったのでしょう。おかげで少し詳しくなった気がします。ニワカですけど。
『体験会に参加される方は1階の受付までお越しください』
話す事もなくなり、ヨソヨソしさが増してきたタイミングで、場内アナウンスが流れます。
「あっ、すいません。この後の体験会に参加しますので行って来ます」
「あぁ、そうなんだ。ガンバってくれ。応援してるよ」
お互い安堵の笑顔で、軽く手を振って別れます。
申し込んだ時は大人ばかりで10人もいなかったのに、受付に行くと30人ほどの小学生がいます。ちょっと躊躇しましたがこれも経験だと思い、覚悟を決めてそのままフィールドへ移動します。
体験会は3位決定戦をやっているピッチのゴール裏で行われ、希望者は決勝戦前のエキシビジョンマッチに参加できるそうです。
左足を浮かせたまま、しっかり握りしめた両方のクラッチ(アルミ製の杖)で体を支えて右足だけでジャンプし、ボールを追いかけて、ボールを止めて、ボールを蹴ります。
なんて忙しいサッカーなんでしょう。
フットサルをやってる時は、思うようにボールコントロールできないし『左足は役にたたねぇ』となんとなく思っていましたが、この時ばかりは左足が使えない不自由を痛感して『いつもありがとう』と自分の左足に感謝していました。
それにしても、わかっていたけど、太腿の筋力が落ちてます。片足でジャンプなんてほとんどできません。それでもなんとか片足で跳んでみます。右の大腿四頭筋が切れそうです。酸素が足りません。息を荒げて苦しんでいるのに「もっと速く、ケンケンして走れ〜!」と、試合を終えた選手がコーチとして気楽に無茶な指示を出します。
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
よたか
こんにちは。『月刊群雛』の掲載が4回目の「よたか」です。ほんの少しだけの興味で名古屋から大阪まで試合を見に行って、どうしても「アンプティーサッカー観戦記」を書きたくなったので勢いに任せて書いてしまいました。
障害者スポーツというとどんな印象をもちますか? 少し前ならレクリエーションスポーツだと思われていたでしょう。しかしパラリンピックが始まってから競技的な側面が強くなってきたように感じます。
スポーツの興行としては正しい姿なのかもしれませんが、誰もが参加できない障害者スポーツにおいては弊害も生まれているのではないでしょうか?
選手の絶対数もそうでしょうが、なかでも意識の差は大きいと思います。代表を目指して練習を続ける選手と、レクリエーションの延長でやっている選手が同じステージでプレイする事に違和感はないのでしょうか?
あくまで個人的な意見ですけど、パラリンピックを始めとした「障害者スポーツ」というカテゴリはなくすべきだと考えております。障害者はスポーツをするなと言っているのではなく、健常者も競技への参加を認めるべきだと思うのです。
作中にも書きましたが、健常者が参加する事により選手の数も増えて全体の競技レベルも上がると思いますし、一緒にプレイする事でお互いをリスペクトするキッカケにもなるとも思います。
常々思っていたのですが、シッティングスキーや、車いすマラソンなら健常者が参加しても違和感はないと思います。
逆に義手や義足なども一般のスポーツに耐えるものが開発されてきておりますので、各競技団体はそういった装具の使用を積極的に認めてもいいのではないでしょうか?
この観戦記は勢いで書いてしまったので、このまま掲載をお願いするのはさすがにちょっと恐くなりました。私の観戦記が元で発禁とか回収とかで迷惑かけたくありませんので「日本アンプティーサッカー協会」へ内容確認をお願いしました。
内容にチェックが入るのを覚悟していたのですが、あっさり「間違いありません。掲載お願いします」と返事がありました。なんて懐が深い団体なんでしょう。驚きました。
そして、アンプティーサッカーに対してもすごく好感を持てました。そして『サッカー少年マニュアル』の続編でコーチにアンプティーサッカーをやらせる決心がつきました。
相変わらず理屈っぽい事ばかり書いてる面倒なオヤジですみません。
『サッカー少年マニュアル』
http://yotaca.com/soccerboy
息子はずっとサッカーをやってきました。良かった事、辛かった事、酷いチーム、いいチーム、大人と一緒にやるフットサル、中学サッカー、高校サッカーなどを見てきて書いた作品です。よろしければ併せてお読みください。
よたかさんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年08月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。