『月刊群雛』2016年04月号には、黒桃将太郎さんの小説『咀嚼夫人』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。
縦書きで読む
※サンプルEPUBはBCCKSの詳細ページでダウンロードできます。
横書きで読む
作品概要
政略結婚で嫁いだ先の家の会社。夫は二代目社長として会社を食いつぶしかけている。
夫の父である会長は、知ってか知らずか私に何も語らない。段々と傾いていく経営、不安の種から花が咲く。
会長である父の殺害、そして保険金を狙う夫、お世話をする間に何かしらの感情が芽生えた今、誰の言葉を信じていくのか。
最後の口づけの味は……
―― 其の甘い接吻は、愛か憎悪か……
咀嚼夫人
序章
カラカラカラカラ
カラカラリ
夏の暑さに暖められた、ヒノキの板張りの廊下。御膳を乗せた台車を押しながら進む。
庭の池では魚が跳ねて、小さな飛沫を上げている。水浅葱色の庭石は、少し苔むして、石肌を飾っている。
薄紫色の着物の裾を擦りながら、部屋の前で止まる。
カラカラリ
障子を引き開けると、十畳程の居間が広がる真ん中で、大きな籐の座椅子にもたれている旦那様が独り。
夫、毒島貴弘の父であり、夫の会社の会長、毒島誠吾である。
半年前に脳梗塞を患い半身が麻痺し、社長職を退いて、夫の貴弘に会社を託してからは何の権限も無い会長として飾られている。
威厳も消え、只、寝起きし食事をして、昼に微睡み、夢とコチラを行ったり来たり。
たまにやってくる黒服の側近と、ボソボソと会話しているのを数度見たくらい。
それ以外はじっと大きな籐の座椅子に揺られて微睡んでいるだけ。
私は旦那様の食事を今日も運ぶ。
シリシリシリシリ……
大きな籐の座椅子と、木目が浮いた一枚板のテーブルだけが置いてある、静かな部屋に響く車輪の音。
硬質ゴムの車輪が畳を進む。
カチャカチャカチャ
陶器の碗が当たり合い音を立てる。
老人は座椅子に半身を沈ませたまま。
「お食事お持ちしました」
私が声をかけると、うぅんと一唸りして、痰を絡ませる。
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
黒桃将太郎(くろもも・しょうたろう)
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
フリーランスで主にウェブライターをしながら、出版社の新人賞等に応募しつつ電子書籍作品を増やしていっております。
主に官能小説を得意としているのですが、人間ドラマ、愛情、憎悪などのドロっとした感情等も書き出すのが好きです。
色々なフェチも持っていましてある種、小説を書くのは自分の中のそういう感情を吐き出すデトックスのような作業でもあります。
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
何気ない会話の中で「口移しってセクシーだよね」という一言があり「咀嚼婦人」というタイトルを思いついたのです。
それを作品にすることはできなかったのですが、ある時メモを読み返した時にストーリーが降りてきて一気に書き上げました。
―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください
夢野久作(ゆめの・きゅうさく)、丸尾末広(まるお・すえひろ)の世界観を頭のなかに浮かべながら書きましたので、ドコかしら匂い立っておるやも知れません。
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
特に考えておりませんが「人生」を考えて生きている人たちでしょうか。
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
しこりのような構想は1年程前にありましたが、形に成ろうとするのを押し出しただけという感じで、書き始めてからは数時間です。
―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか
Twitter、Facebook、ホームページにアマゾン著者ページです。
―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか
読んで貰って意見を頂ける機会が少ない事です。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)の『人間椅子』『芋虫』。丸尾末広の『少女椿』。夢野久作の『ドグラ・マグラ』『少女地獄』あたりは何度も読んでいます。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
電子書籍の普及、そしてその時のために一作でも多く出版していきたいと思います。
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
機会があれば、直接でも感想を頂けたら今後の励みになります。
◆ホームページ:『黒桃館』
http://kiriyan.wix.com/gogokuromomo/
◆Twitter:デヴォン黒桃
https://twitter.com/l_o_v_e_momo/
◆Facebook:黒桃将太郎
https://www.facebook.com/kuromomoshotaro
黒桃将太郎さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年04月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。