『月刊群雛』2016年02月号には、波野發作さんの小説『エピソード・ゼロ』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルなどをご覧ください。
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作品概要
オルガニゼイションの腕利き調査官〈エージェント・オー〉こと、ラシッド・レム・イファス・オーは、一年に渡る追跡の末、ピストル星系・惑星ライムスの辺境で、ついに〈ラストエンペラー・ゼロ〉の所在をつきとめた。その直後、「ゼロ皇帝は死亡した」との情報がオルガニゼイションの対帝国調査本部から全宇宙に発表された。
こうして、かつては全宇宙を支配してきた超銀河統一帝国もついに終焉のときを迎え、結局後継者を定めることなく最後の皇帝の崩御が明らかとなった。断絶となった帝国に残されたのは天文学的な数字の負債のみ。それまで後継者を自称していた次期皇帝候補たちは手のひらを返すように、慌てて皇帝との血縁を否認しはじめるのだった。
これはそんな銀河帝国末期の、〈秋葉先生〉とアント王子が出会う少し前の、〈発端〉の物語。
―― ズキューンとバキューンのそもそもの物語
エピソード・ゼロ
なんかもうどうでもよくなっちゃった。
by ゼロエル・ジェン・ド・エタルニアXCⅨ世
(超銀河統一帝国・第九十九代皇帝・ファイナルエンペラー)
老衰で病床にあった〈ゼロ皇帝〉が結局最後まで後継を指名しないまま崩御したので、ついにエタルニア朝統一帝国は断絶となった。ギリギリ最後まで交渉は行われてはいたが、三人の皇帝候補のいずれもその指名を得ることはなかった。
葬儀は国民感情を考えて帝国様式で行われたが、その莫大な費用はオルガニゼイションが負担していたので、後日遺族に請求書が送られることだろう。三人の皇帝候補はここまで必死で皇帝の縁者であることを証明しようと躍起になっていたが、これからは縁者ではないことを必死で証明することに奔走しなければならないわけで、なんとも皮肉な光景だった。実際のところ、三人の皇帝候補の誰一人としてゼロ皇帝のDNAを1%も引き継いではいないので、その証明はそう難しいことはないだろう。しかし、オルガニゼイション側のエージェントは誰かを債務者を指定するためにいかなる小細工も辞さないだろう。おそらくは三人が一様に同じだけ(3%程度)のDNAをゼロ皇帝から受け継いでいることになって、葬儀費用はちょうど三等分にして各候補に請求されることになるだろう。それは彼らのバックにいる旧帝国系財閥の無力化という副作用もある。彼らにとってはなんのメリットも無い貧乏くじ以外の何者でもないが、オルガニゼイションという新体制のためには、帝国に後継者はもういないと広く認識させることがどうしても必要であるし、銀河市民の支持も受けられるだろう。いずれにせよ、99代続いた超統一銀河帝国も遂に滅亡の時を迎えたわけであり、二五〇年にわたるオルガニゼイションの商圏拡大路線も銀河全域を手中に収めて、これで一段落したことになる。
オルガニゼイションとは銀河を統一する機構であるが、それは国家ではない。国家を越える存在である。いや存在という言い方は実態にそぐわないかもしれない。〈様式〉という言い方のほうがより近い。一般には「汎銀河商業協同組合」のことを指してオルガニゼイションと呼ぶことが多いが、これは完全に正しいというわけではない。例えばこの巨大な組合が解散になったとしても、無数にある個々の契約が解消されるわけではなく、それは契約者同士の個別の問題であるため、オルガニゼイションは確固として存在し続けるのである。また、汎銀河商業協同組合には属さないが、オルガニゼイションの所属とされる機構は数多くある。単にそれら多くの商業機構のうち、最も規模の大きな組合が代名詞的に扱われているという、ただそれだけのことである。オルガニゼイションが何であるかを論ずるのは、それこそ新たにギャラペディアを丸ごと書き起こすのと同等か、それ以上の労力を必要とするだろう。そして、その労力が報われることはない。書き終わる頃にはオルガニゼイションはすでに変容して、少し異なる別の何かになっているからだ。オルガニゼイションは〈契約〉を細胞として、無限に増殖と突然変異を繰り返す巨大な宇宙生物のようなものである。そしてついに銀河帝国は滅亡し、この宇宙全体を支配するのは唯一オルガニゼイションだけになったのだった。
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
波野發作(なみの・はっさく)
『月刊群雛』や群雛文庫で『オルガニゼイション』シリーズを展開中。
◆ 公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/
―― 「オルガニゼイション」ってなんなんですか
全銀河を牛耳っている商人の集合体です。あまりに規模が大きすぎて、その全貌は誰も知りません。わたしも知りません。
―― 作品としての「オルガニゼイション」は?
あ、そっちは一年前の『月刊群雛』2015年02月号掲載の『ヴェニスンの商店』から始まった、スラップスティック系SFシリーズのことです。『オルガニゼイション』は今回登場した〈秋葉先生〉こと銀河商人の「ズキューン・バキューン」氏(今回ついに本名バレしましたね)が主人公の連作短編なのです。今回のお話はそのまま『ヴェニスンの商店』に繋がっています。こちらは群雛文庫『オルガニゼイション』シリーズでもお楽しみいただけますので、ぜひお求めください。
―― アシモフの「ファウンデーション」と何か関係があるんですか
か、関係なんかあるわけないじゃないですか。畏れ多いことを言わないでください! もう帰りますよ!
―― このシリーズはアントくんが主人公じゃないのですか
え、ああ、まあ彼はゲストみたいな。VIPだし。主人公は一応ラシッドの方です。基本的にラシッドの物語なんですが、本人はたまに不在だったりします。
―― この先はどうなるのですか?
今進んでいるシーズン1はあと三話で完結します。どこで発表するかは今のところ未定です。シーズン2の予定はあります。あとラシッドメインの主軸以外に、他のキャラたちのブランチシリーズも考えています。
―― 最後に一つだけ。群雛文庫『オルガニゼイションⅢ』の表紙でジェシカが着ているTシャツに書かれているアレはなんなんですか?
「一斗二升五合」ですね。あれは「ごしょうばいますますはんじょう」と読むんです。一斗=十升。つまり五升の倍で「ごしょう、ばい」。で二升は「ますます」。五合は一升の半分ですから、「はんじょう」。「御商売益々繁盛」というわけです。銀河商人の間で古くから伝わる景気回復の呪文の一種と聞いています。ちなみに猫が出てくる第五話「猫、あるいは夏のスフィア」と問題作の第六話「集めた方程式」を収録した群雛文庫『オルガニゼイションⅢ』はいつものストアで好評発売中です。どうぞよろしく。
https://gunsu.hon.jp/2015/12/GunSu-pocket-edition-Organization-3.html
波野發作さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年02月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。
インディーズ作家よ、集え!
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画など自らの作品をセルフパブリッシング(自己出版)している方々の活動を応援する団体です。コミュニティ運営、雑誌『月刊群雛』の発行、セミナーの運営などを行っています。
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— NPO法人日本独立作家同盟 (@aia_jp) 2015, 8月 20