小説『夏のかけら』連載第3回が『月刊群雛』2015年11月号に掲載! ―― 作品概要・サンプルと幸田玲さんインタビュー #群雛

作品情報&著者情報
『月刊群雛』2015年11月号

『月刊群雛』2015年11月号には、幸田玲さんの小説『夏のかけら』連載第3回が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルとインタビューをご覧ください。

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作品概要

 荷物を載せたワゴン車を走行して綾香あやかの叔母宅に向かう途中、達也たつやは、千尋ちひろが好きだった喫茶店が通り道にあることを、ふと、思い出す。叔母が夜の七時ごろにならないと自宅に戻れないことを知り、達也はその喫茶店に綾香を誘った。千尋との思い出の場所で、達也は千尋との記憶をなぞるようにして、綾香と過ごした。

夏のかけら

 ◆第三話◆ 

 喫茶店の駐車場に着いた。
 ワゴン車のドアを開けて外に出た。忙しない、ヒグラシの鳴き声が聴こえる。仰ぎ見ると、青い空がある。目を転じて、駐車場に隣接する雑木林を見た。そこは、市の公園施設だった。
達也たつや綾香あやかを誘い、散歩道を歩いた。
 周囲の木々の枝葉が、青空を遮っている。夕暮れにはまだ早いが、日射しは弱まっているようだ。ときおり、ヒグラシの鳴き声にまぎれて、鳥のさえずりが聴こえてきた。
千尋ちひろと過ごした、十一月のある日のできごとが、達也の脳裏に浮かんだ。
 その日は霧雨が降っていて、灰色の雲が視界を覆っていた。達也は相合傘で、公園の散歩道を歩いていた。
 千尋は不意に立ち止まり、「見て! 変わった小鳥がいる」と驚いたような声を上げた。
 大木の根元に、ぬれた枯葉が積み重なっている。その場所に、小鳥たちが集まっていた。
 観察していると、突然、数羽の小鳥が鋭い鳴き声を上げた。それを合図に、小鳥たちは乱れた動きで踊りだし、動きに合わせて、さえずる声を上げた。興奮が高まりをみせたのか、小鳥たちは体を激しくふるわせ、鋭い鳴き声を森林に響かせた。
 その光景を見ていた千尋は、素朴な笑顔を達也に向けた。達也は愛おしくなって、思わず右肩を抱き寄せた。千尋の湿った肌の熱が、達也の肌に溶ける。抱きしめながら顔に頬を寄せると、千尋の温かさが達也の頬に伝わってくる。その時、何ともいえない幸福感に包まれた。千尋とつながっている、と実感して、達也は胸をふるわせた。

 喫茶店の木製のガラス扉を開くと、カウンターにいる、すらりとした中年女性が顔を向けた。店主のようだ。いらっしゃいませ、という声を上げ、涼しげな笑みを口元に浮かべた。
 達也は軽く会釈して、奥にある無垢の木で作られた円卓に向かった。
 店のいたる処に、アンティークのオブジェが置かれている。
 円卓の真ん中には大きな花瓶が置かれ、大輪の白い百合の花が咲き乱れていた。上部には、ロート・アイアンの装飾を施した大きなシャンデリアが釣り下がっている。
 窓辺の円卓には四席の椅子がある。千尋がいつも座っていた椅子に、綾香が座った。達也は対座した。
 店主はにこやかな表情で、おひやとおしぼりを持ってきて、飲み物の注文に訪れた。
 ふたりは、アイス・コーヒーを注文した。
 木製の窓から陽光があふれ、円卓のあたりを照らしていた。ガラス越しから、公園の雑木林の青々とした枝葉が見える。そこは、千尋の一番のお気に入りの場所だった。
 千尋を失ってから、この店には一度も訪れてはいない。
 綾香と、この店を訪れたのは不思議だった。まるで、トレースをしているようだ。

※サンプルはここまでです。

幸田玲さんインタビュー

幸田玲

―― まず簡単に自己紹介をお願いします

 はじめまして、幸田 玲(こうだ・れい)と申します。
 自営業の傍ら、小説を書いています。生業とインディーズ作家の活動で、兼業を目指していきます。
 ボイスドラマにも関心を寄せていますので、公開している掌編小説の中から取り上げた作品を、自ら脚本化し、業界の方の協力で二本のボイスドラマを制作して、公開しています。

◆寄稿先:『小説家になろう』
http://mypage.syosetu.com/134346/
◆Twitter :(@bestplanning)
https://twitter.com/bestplanning
◆Google+:
http://plus.google.com/115744212482287321693/

―― この作品のターゲットはどんな人ですか

 色々な年代層の男女の読者様に読んでいただきたいと思っています。
 性別、年代層によって、受け止め方は様々だと思いますけど。

―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

 ツイッターで、定期的に宣伝しています。

―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

 注目している作家のひとりに、池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)氏がいます。
 主に、時代小説を描いた作家でした。没後25年が経った現在も作品は読み継がれ、ミクシィにもコミュニティがあり、8050名の方が参加されています。
 氏の簡潔な文章には味わいがあり、描かれる情景は目に浮かび、物語に登場する人物の心情は、私の胸のうちに染み込むようです。
 10月号で話題にした山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)氏と池波正太郎氏の共通しているのは、学歴が小学校卒だということですね。

―― 今後の活動予定や目標を教えてください

 いずれ、電子書籍の販売を開始して、インディーズ作家の活動で兼業を目指す予定です。また、今後もボイスドラマのプロデュースをしていきたいと考えています。

―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 読者様の心を揺さぶることができるような、物語を描きたいと思っています。
 精進してまいりますので、よろしくお願い致します。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

幸田玲さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2015年11月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。

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