小説『オルガニゼイション』連載第5回が『月刊群雛』2015年11月号に掲載! ―― 作品概要・サンプルと波野發作さんインタビュー #群雛

作品情報&著者情報
『月刊群雛』2015年11月号

『月刊群雛』2015年11月号には、波野發作さんの小説『オルガニゼイション』連載第5回が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルとインタビューをご覧ください。

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作品概要

 河川敷のベンチで美しい夕焼けを眺めながらミドル・アースこと地球人高校生・中野大地は先輩ら(イークロン、アクィナス、ソロン)との「夏の遠征」を思い出す。アント王子に騙されて連れ出された遥か遠く銀河の果ての戦場。新兵訓練からの突然の実戦配備、そして開戦。〈機械化騎士〉のエキサイティングなコンバット。暴走する黒い悪魔〈鋼鉄の羊〉。絶体絶命のピンチからの起死回生で九死に一生を得た日々。努力と友情と勝利。そんな戦いに明け暮れた夏休みをしんみりと回想していた。年が明ければ先輩たちは受験生になる。大地は一人取り残された感じがしてならなかった。もう少しだけ、このメンバーで過ごせないだろうか。大地は祈った。時よ、止まれ。と。そして願いは叶えられた。青春は、永遠だ。ていうか、ちょっと、どうすんのコレ。

黄昏の街

  うまく使えば、時間はいつも十分にある。
       by ギョエテ(ドイツの文豪)

 この日、中野大地は退屈していた。

 大地が、夏休みに〈黒衣の機械術師ブラックアウト〉の〈ミドル・アース〉として、アントの指揮する第810次テンピリア十字軍に従軍し、エストカピタル城塞東壁戦役で伊黒准イークロン羽里開成アクィナス園田論ソロンらと共に第一級の戦功を挙げてから、はや二ヶ月が過ぎようとしていた。元はと言えば、彼らは半ば強引、いや、あからさまに強引に、ほとんど拉致されるかのように宇宙船に押し込められ、有無を言わさず地球人傭兵としてテンピリア軍の王子近衛部隊(アントの気まぐれでなんでもやらされる貧乏くじ部隊)に放り込まれ、惑星ネオインでの三日間の地獄の新兵訓練(超圧縮カリキュラム)を経て、ヴァリキャトリ樹海の泥まみれの初陣では運良く戦果を上げ、ティオー要塞攻略戦ではアントの危機を結果的に救うという功績で叙勲を受け(本当にあいつが危機に陥っていたのかどうかは誰にもわからない)、その後のガッデン遺跡奪回作戦では部隊全滅の危機に陥りかけた(アントの責任だとは思うが誰もそれは言えない)のを間一髪の逆転勝利で切り抜け生還、エストカピタル戦役では暴走して無差別に戦場を蹂躙するUNDO(バーサーク状態のアント)を食い止めることに成功し、友軍、敵軍を問わず伝説の英雄となったのだった。これはゲームの話ではない。彼らが実際に体験した、夏休みの思い出である。

 本当は海の家でバイトでもしようぜ(もちろんナンパもな)と伊黒らと四人で連れ立って出かけたところ、駅でばったり出会ったアントに「お前たちちょっとバイトしない? 結構稼げるよ」と誘われるがままに地球を離れ、銀河の反対側くんだりまで連れて来られて、まさかの傭兵生活を強いられることになったわけである。ほとんど着の身着のままで連れて行かれ、ケータイの電波は届かず(当たり前)、親たちは激怒しているかと思っていたのだが、いざ帰ってみるとアントの母親から各家庭にきちんと連絡があったようで、特に騒ぎにはなっていなかった。従軍の報酬は想像以上の金額だったが、地球上で使える通貨には換金が不可能なため、ぶっちゃけただ働きだったことになる。あとはもうテンピリアが滅ぶ前に地球がオルガニゼイションに加盟することを祈るしかないが、ぶっ壊れてるアントと、それに輪をかけてイカれてる兄王子たちや、あのMAXぶっ飛んでる現テンピリア王の治世では、いつあの星国が滅んでもおかしくない、と大地たちは思っていた。ただ、仲間と戦った夏の三週間が、彼らにとってかけがえのない時間となったのは間違いなく、この希有な体験、それこそが報酬なのだった。ただ、それを言ってしまうとアントが「じゃあそれで」とバイト代をチャラにしかねないので、言わないことにした。言ったらダメだ。

 二学期に入ってから、大地はゲームセンターに一度も行っていなかった。結局夏の間バイトしてなかったのと同じことなので、慢性的な金欠状態に陥っていたし、一年生の大地以外の面々は二年生だから進路指導や補講が増え、あまり行動を共にしなくなっていたし、何より、現実の宇宙戦争を戦い抜いて帰還してからは、ゲームがつまらなく感じるようになってしまっていたのだった。

※サンプルはここまでです。

波野發作さんインタビュー

波野發作

―― まず簡単に自己紹介をお願いします

 波野發作(なみの・はっさく)です。連載も5回目。残すところあと1回。どうですか。そろそろ名前覚えてくれましたか? まだですか。そうですか。波は海のチャプチャプしてる波の波です。野は野原の野。發は麻雀の白發中の發です。あ、麻雀やらない? 最近やる人少ないですもんね。作は作文の作です。「{発作}(ほっさ)」と書いちゃうと本来の意味になっちゃうので、旧字体で「{發作}(はっさく)」にしたんです。夜露紙苦!

◆公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/
◆Twitter:
https://twitter.com/fuliefool/
◆Facebookページ:
https://www.facebook.com/naminow/

―― この作品を制作したきっかけを教えてください

 第5話は完全オリジナルというか、25年前にぼく自身が書いた小説のセルフパロディです。タイトルは当時のままです。その頃持っていた富士通OASYSで書いたもので、今では打ち出しもデータも残っていません。今回登場する新キャラも当時降ってきたもので、結構長いストーリーのヒロインだったりします。四半世紀の時を超えて、ようやく人前に出てきてくれました。

―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください

 さて、ずいぶん昔のことなのでどこまで思い出せるかわからないですが、あの頃は、小説では星新一(ほし・しんいち)とか筒井康隆(つつい・やすたか)とか椎名誠(しいな・まこと)を読んでいたので少なからず影響は受けているはずです。海外SFはまだそんなに手を付けていなかったかな。500万円欲しさに日本ファンタジーノベル大賞に応募しようとか野望を抱いていたので、その初期の頃の受賞作はたくさん読んでいたと思います。

―― この作品のターゲットはどんな人ですか

 一神教の信者ではない人。念ずれば時間は止まるんじゃないかと本気で考えている人。今が楽しい人。ずっと若いままでいたい人。第6話が気になる人。

―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか

 今回の連載向けの6作の中では一番時間がかかりました。他は1日ずつで書いていますが、これだけ5、6日かかっています。まあ構想にはたっぷり25年かかったわけですから、そう簡単にはレストアできなかったってことですね。

―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

 SNSでモゴモゴ言うなどは相変わらずですが、そういえば最近、Twitterを再開しました。あとFacebookでは「波野發作」名義でページを作りました。フォロー&お友達申請大歓迎です。あと、同盟のお仲間さんに「読んでくれ」と言われたらガンガン買って読みますので、ぼく個人向けに名指しでじゃんじゃん宣伝してください。気に入ったらあっちこっちで言いふらしますからね。待ってます。

―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

 今このインタビューを受けている時点では、電子雑誌『AiR』の首謀者でテレビや各方面にもちょいちょい出ている堀田純司(ほった・じゅんじ)さんの小説『オッサンフォー』をコボタッチで読んでいます。ちょうど面白くなってきたところなので、明日には読み終わると思います。
 あと2、3日前に藤井太洋(ふじい・たいよう)さんの『アンダーグラウンド・マーケット』をノーブレスで一気読みしました。まだ読んでない人は是非。オススメです。

―― 今後の活動予定や目標を教えてください

 さて、もうそろそろいろいろ明らかになっているはずなので告知しちゃいますと、『オルガニゼイション』の文庫化に伴って、続編も書き下ろしてあります。次号の連載最終回である第8話でひとまずの完結はしますが、そもそも一話完結のシリーズなので物語自体は終わりません。おそらくは、文庫の形で第5巻以降としてお目見えすることになると思います。ご期待ください。

―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 次回はいよいよ連載最終回。これまたSFの定番ネタ「タイムリープ」です。お楽しみに。

波野發作さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2015年11月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。

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