小説『オルガニゼイション』連載第4話が『月刊群雛』2015年10月号に掲載! ―― 作品概要・サンプルと波野發作さんインタビュー #群雛

作品情報&著者情報
『月刊群雛』2015年10月号

『月刊群雛』2015年10月号には、波野發作さんの小説『オルガニゼイション』連載第4話が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルとインタビューをご覧ください。

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作品概要

 スーパードライブ航行中の宇宙船〈フォアラーク号〉で密航者が発見された! 宇宙の法律は、密航者は発見次第「遺棄」すべしという冷徹なものだというのは常識中の常識だ。船の安全を任されている船長のキャプテン・ハックは、当然密航者を追い出すべく、船内の捜索を始める。「出てこい!」船倉に響く声。人影がうごき、ハックはブラスターを構えるのだが……。有史以来、多くの事例を後世に残す〈方程式問題〉。フォアラーク号のクルーは、人類最大の難題に果敢に挑む。密航者一人の命はどこまで重いのか。クルーに突きつけられる選択とは。最後に泣くのはいったい誰だ! スラップスティック系SFコメディ連載第四話!

集めた方程式

 宇宙船内で発見された密航者は、発見と同時に直ちに遺棄すること。
   by 銀河航行法・汎宇宙空間条例第八条、第三十七条、第百二十八条

「おい!」
 一等恒星間商船〈フォアラーク号〉の狭いブリッジで無駄に体格の大きな機関士ザック・ザッケンナーが大声を出した。通常空間から次元跳躍スーパードライブ用の亜空間に境界遷移パラレルシフトした矢先のことだ。ザックが異変に気づいた直後、船内の異常を知らせる警報が鳴り響いた。ブリッジ正面のスクリーンには「乗員超過+1」の文字が赤く表示されていた。
「1人多いぞ。11人いる!」
「11人?」
 船長のハックマン・レスポール、人呼んでキャプテン・ハックは記憶を頼りに乗員と乗客を指折り数えた。うむ。10人しか乗っていないはずだ。
「なぜだ、誰が多いんだ」
 ブリッジ左舷の通信席にいる通信士バル・バーロイが、乗客名簿を見ながら一人ずつ数えた。
「ええと、客室にアント王子と、ご学友のイークロンさん、アクィナスさん、ソロンさん、ミドルさんの5名。人員輸送なので船医のブレス・ユウ先生が医務室にいます。あとはブリッジにいる私と、ザックとボヤージと、あとロッサムの4人で、合計10人ですね」
 ブリッジ中央の専用ドックに収まっている、分析・演算用ロボット〈ロッサム〉がピポポと声を上げた。
「バカヤロウ。ロッサムを入れるな。俺が10人目だよ」
 船長が、ツッコミを入れた。しかし、他にもう一人何者かがいることを、船のメインコンピュータが指摘していた。

 彼らは10人ではなかった。
「これは、〈密航者〉ですね!」
 新人航海士のボン・ボヤージが嬉しそうに言った。船長は、忌々しそうに吐き捨てた。
「F! 〈方程式イクエイション〉かよ。面倒なことになったな」
 宇宙船はスーパードライブ開始時に、積載量を厳密に設定し、ワープアウトまでの設定推進量と宇宙船全体の質量のバランスを正しく設定しなければならない。設定と実際の質量がズレた状態でワープアウトすると、予定した空間ではないところに飛び出してしまうことになり、もしそこに恒星があれば宇宙船は瞬時に燃え尽きてしまうし、うっかり有人惑星に激突したら大惨事になりかねない。大昔には惑星が一つ消し飛ぶような大事故も起こっている。そのため銀河航行法では船内で密航者を発見した場合、クルーの判断で原因を「排除」することが許されていた。いわゆる〈冷たい方程式〉である。スーパードライブは跳躍開始時に推力が確定してしまうので、調節はすべて質量の方で行わなければならないのだ。
「〈方程式〉! 〈方程式〉っすか! マジすか!」
「なんでそんなにはしゃいでるんだ」
「いや、だって〈方程式〉ですよ。船乗りとしては一度は経験しないと一人前とは言えないって商船大の先輩が」
「経験してもお前は半人前だろが」
 うへーとおどけてみせたが、ボヤージはなんだか嬉しそうだ。クルーの面々は、シートバックの収納ケースから武器を取り出して、船内捜索の支度を始めた。

※サンプルはここまでです。

波野發作さんインタビュー

波野發作

―― まず簡単に自己紹介をお願いします

 波野發作(なみの・はっさく)です。もう連載も四回目ですね。作家的な活動を始めてそろそろ一年というところです。思い返せば去年の十月に『ストラタジェム;ニードレスリーフ 巻ノ壱 キルアクロウ』をインディーズで出したのがそもそもの始まりでした。そういえばそっちの方は第二巻がまだ……。他にはSS合評という企画に参加したり、いろいろ幅が広がってきてます。もうしばらくがんばりますので名前だけでも覚えて帰ってください。ナミノです。

◆公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/

―― この作品を制作したきっかけを教えてください

 『オルガニゼイション』はなんかのパロディだったり、オマージュだったりを組み込んでいくのが基本方針なわけなんですが、であればもう定番中の定番である〈方程式〉をやらないわけにはいかないぜ、ということで生まれたのが今回のネタです。オチに関しては西牟田靖(にしむた・やすし)さんの著書『本で床は抜けるのか』(「マガジン航」連載、紙版:本の雑誌社、電子版:ボイジャー)に大きなヒントをいただきました。ありがとうございました。

『本で床は抜けるのか』電子版はボイジャーから
http://binb-store.com/index.php?main_page=product_info&products_id=16745

―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください

 トム・ゴドウィン『冷たい方程式』(ハヤカワ文庫SF)、アーサー・C・クラーク『ひずみの限界』(『太陽系オデッセイ』新潮文庫)、筒井康隆(つつい・やすたか)『たぬきの方程式』(『国境線は遠かった』ハヤカワ文庫JA)、堀晃(ほり・あきら)『連立方程式』(『梅田地下オデッセイ』ハヤカワ文庫JA)、湯田伸子(ゆだ・のぶこ)『修道士の方程式』(『時のオルフェ炎の道行:SFロマン珠玉傑作集』マイコミックス)他

◆『NAMINO_WORKS』方程式コレクション
http://goo.gl/ooyVbY

―― この作品のターゲットはどんな人ですか

 SFが好きな人。家の本が増え過ぎて床が抜けそうな人。あと、これから宇宙に出て〈方程式〉問題に直面しそうな人。

―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか

 書くのは丸1日ぐらいでしたが、文献を集めて読むのに結構かかりました。ここまで来るとキャラが勝手に動いてくれるので、書くこと自体はそんなに時間かからない感じですね。

―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

 毎度のように自前のWebサイト、アプリで紹介、SNSでモゴモゴ言うなど。そろそろ他のこと考えないと。

―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか

 「とりあえず読んでくれる人」がいないってのが一番困ります。もし、あなたのパートナーが書き立てのものを渋々でも読んでくれる相手だとしたら、大事にした方がいい。そんな人もう出会えないですぜ。

―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

 我らが藤井太洋さんが『オービタル・クラウド』で星雲賞を受賞されました。おめでとうございます! 記念にまた読んでいます。

―― 今後の活動予定や目標を教えてください

 楽しかった連載もあと2回。そろそろその先のことを考えています。この号が出る頃には公表されているのかな? まだかな?

―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 次回はこれまたSFの定番ネタ「時間停止」です。お楽しみに。

波野發作さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2015年10月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。

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