次に、条件面やメリット・デメリットについてまとめてみます。
ロイヤリティ(印税)
GooglePlay ブックスで売れた場合は、リストプライスの 52%がロイヤリティです。リストプライスは「販売価格として出版社が推奨した価格」と定義されているので、仮にGoogleが勝手にキャンペーンで値下げ販売したとしても、その分はGoogleが負う形になるはずです。
また、規約には「Google認定再販業者」という記述があります。これは要するに、Googleがいわゆるディストリビューター(流通業者)として機能する制度で、提携する他の電子書店でも販売できるようです。ただ、規約に定められてはいるものの、どこかと提携しているといった情報が見当たらないので、まだ機能していないのかもしれません。認定再販業者を通じて売れた場合は、リストプライスの 45%がロイヤリティです。
本稿執筆時点で、個人出版が可能なプラットフォームの印税率を比較してみましょう。
ストア | 印税率 |
Gumroad | 95%(-25¢) |
85%(-7円) | |
loftwork.com | 80%(PayPal手数料別途) |
wook(ウック) | 75% |
forkN | 70%(別途ボーナス制度) |
Kindleダイレクト・パブリッシング ※独占契約時 | 70% |
iBooks Store | 70% |
ブクログのパブー | 70% |
BCCKS | 70% |
GooglePlay ブックス | 52% |
E★エブリスタ | 40% |
Kindleダイレクト・パブリッシング ※通常 | 35% |
商業出版物も販売している大手のプラットフォームだけで考えると、Kindleダイレクト・パブリッシング(通常時)より条件はいいけど、iBooks Storeよりは悪い、というポジションです。
支払い条件
規約には、支払い条件は「収益を受け取った暦月の末日より 60 日以内」と記載されています。売上起算じゃないんですね。「”Googleが”収益を受け取った」という意味で捉えると、売上月の翌末にGoogleに振り込まれるとすれば、こちらへの入金は売上月の末から90日以内ということになります。ちょっとこの辺りは、実際どうなのかを確認してみる必要があると思います。
また、「お支払い基準額」というのもあります。規約によれば「出版社の稼得残高が 100ドル (9,000 円)」未満の場合は送金されないそうです(規約の文言には円安が反映されていない)。Google AdSenseと比べると、ちょっと条件が厳しいように感じます。
GooglePlay ブックスで個人出版をするメリット
GooglePlay ブックスで個人出版をするメリットを挙げてみます。
利用対象となりうるユーザーの幅が広い
「(0)そもそも Google Play ブックスってなに? 」でも書きましたが、Androidのみならず、iPhone / iPod touch / iPad(iOS)、ウェブブラウザでも利用できるので、スマートフォンやタブレットを持っていない人でも、パソコンが利用できる環境さえあれば Google Play ブックスは利用可能です。
これは、自分が出した本を、スマートフォンやタブレットを持っていない知人にも勧められることを意味します。Googleアカウントさえあれば、職場のパソコンや、インターネットカフェでも見られるわけです。
いまのところiOSとMac OSだけ対応のiBook Storeや、AndroidとiOSだけ(※当時)のKindleストアに比べると、大きなメリットだと思います。
競争相手がまだ少ない
これも「(0)そもそも Google Play ブックスってなに? 」で書きましたが、出版社の多くが Google Play ブックスには及び腰なので、商業出版物のラインナップがまだ少ないです。つまり、他のストアに比べると埋もれづらいということが言えるでしょう。
販売価格を無料に設定できる
Google Play ブックスは、販売価格を無料に設定できます。つまり、対価が要らない場合、Google Play ブックスは非常に魅力的なプラットフォームということが言えます。費用もかかりません。
iBooks Storeでも無料配信は可能ですが、対象ユーザーがiOSとMac OSだけに限定されてしまいます。Kindleダイレクト・パブリッシングの場合、通常は無料配信ができません。独占配信契約時には、キャンペーンとして期間限定での無料配信は可能ですが、常時無料にはできません(※プライスマッチングという裏技を使えば可能ですがここでは解説しません)。
(恐らく)SEO的に有利
これはあくまで想像ですが、検索エンジンのGoogleが運営しているストアですから、恐らくSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)的には有利でしょう。Yahoo!やGoogleで、本のタイトルや紹介文に入っているキーワードが検索された時に、上位表示される可能性があります。
PDFで配信できる
PDFでの配信に対応しているので、無理にEPUBで制作するのではなく、Wordか何かで作ってPDF化してポンと上げてしまえばOK、みたいな手軽さがあります。まあ、その場合はもちろん、リフローには対応しないわけですが。
GooglePlay ブックスで個人出版をするデメリット
最大のデメリットは、Kindleダイレクト・パブリッシングで独占配信契約が結べなくなることでしょう。あのKindleストアで、70%のロイヤリティというのは、非常に魅力的です。Amazonランキングの上位になると爆発的に売れるので、「ああ、独占配信しておけばよかった……」と後悔するかもしれません。
まとめ
選択肢としては、電子書籍市場の4割シェアを握っていると言われるKindleストアだけで独占配信をするか、Kindleストアを含め多くのストアで配信するかの、2つに1つでしょう。
筆者は、Kindleストアが市場を独占していくのは非常に怖いし面白くないので、なるべく多くのストアへ配信するようにしています。もちろん、Kindleストアだけで配信する選択肢を、否定はしません。
ただ、もしKindleストア以外でも配信をするなら、Google Play ブックスは外さない方がいいと思います。